【2023年4月法改正】不活性ガス消火設備とは?設置基準や消化設備との違いも
建物には、防火設備として消火器の設置が義務付けられています。消火器には粉末式消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備があり、細かく設置基準についても定められています。
また、不活性ガス消火設備の一部について、2023年4月に法改正があり、設置に際するいくつかの基準の変更がありました。消火設備の違い、設置場所、そして法改正の内容についてまとめます。
不活性ガス消火設備とは
科学的に安定で、他の元素や化合物と反応しにくい気体のことを総称して、不活性ガスと呼びます。
この不活性ガスを消火用に使っているのが、不活性ガス消火設備です。
不活性ガス消火設備に使われるガスは、主に二酸化炭素、窒素、アルゴナイト(アルゴンと窒素の混合気体)、イナージェン(窒素50%、アルゴン40%、二酸化炭素10%の混合気体)などがあります。
不活性ガス消火設備のほかに、一般的な消火器の仕組みである粉末式や、同じくガス消火設備であるハロゲン化物消火設備などもあります。
いずれも、燃焼物の周りから酸素を減らすことで類焼を防ぎ、鎮火しています。
不活性ガス消火器は気体のみで鎮火できるため、消火薬剤が飛び散る粉末式消火器に比べて視界を妨害しにくく、避難を難しくしないというメリットがあります。
一方、粉末消火器はABC消火器とも呼ばれ、普通火災(木や紙が燃えて起こる火災)、油火災、電気火災のいずれにも効果を発揮するのに対し、不活性ガス消火器は普通火災に対する消火能力は必ずしも高くありません。
また、気体による鎮火のため、密閉空間での使用の場合は窒息のリスクがあることも留意しなくてはいけません。
2023年4月の法改正内容:二酸化炭素消火設備について
不活性ガス消火設備のうち二酸化炭素消火設備について、2023年4月1日に法改正が施行されました。
以下の通り、新基準を満たしているかどうか、確認しましょう。
閉止弁の設置
点検時の誤放射を防ぐために設置する弁を閉止弁と呼びます。
従来は「所轄消防指導に基づく設置」だったのに対して、新基準では認定品の設置が義務化されています。
二酸化炭素の危険性等に係る標識の設置
二酸化炭素消火設備では、二酸化炭素を保管する場所(消火ボンベ庫室)と二酸化炭素が放出される場所(防護区画)で、それぞれの出入口など見やすい場所に注意喚起の標識を設置する必要があります。
標識はイラストタイプと文章タイプの2種類があり、どちらも掲示が求められます。
点検時にとるべき措置を定めた図書の備付け
工事や点検時にとるべき措置の具体的内容や手順を定めた図書(機器構成図、系統図など)を備え付けることが義務付けられました。
消防設備士等による点検の実施
全域放射方式の二酸化炭素消火設備については、消防設備士や消防設備点検資格者に点検をお願いする必要があります。
不活性ガス消火設備の設置が求められる場所
不活性ガス消火設備は、以下の場所に設置が義務付けられています。
移動式
- 道路(自動車の通行が可能な部分)
全域放出方式
- 指定数量の1,000倍以上の指定可燃物を貯蔵し取り扱う部分のうち、綿花類・かんなくず・木材加工品・木くず等を保管する場所
指定なし
- 自動車の修理、整備等に使われる場所
- 駐車場
- 発電機、変圧器等の電気設備室
- 鍛造所、ボイラー室、乾燥室等
- 通信機器室
- 指定数量の1,000倍以上の指定可燃物を貯蔵し取り扱う部分のうち、可燃性固体や可燃性液体を保管する場所
おおむね「ガソリンや綿、木などの燃えやすいものが多く集まる場所には不活性ガス消火設備が必要」と理解しておくといいでしょう。
面積などにはそれぞれ指定があるため、管理物件が該当しているかどうかは、事前にしっかり把握しておく必要があります。
定期的な不活性ガス消火設備交換で安全を維持しよう
不活性ガス消火設備は、高圧で二酸化炭素などのガスを保管しておき、いざというときに射出する仕組みです。
経年劣化が進むと保管用のボンベが暴発するリスクが高まります。
また、不活性ガスは酸素を奪うことで消火を行うため、事故が起きたときの窒息リスクが非常に高い消火設備です。
定期的に点検を行い、必要に応じて修繕・買い替えなどを進めていきましょう。
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