消火水槽って何?設備の仕組みや設置基準、点検義務についても解説!

消火水槽って何?設備の仕組みや設置基準、点検義務についても解説!

大きな建物や施設内で火災が発生すると、たくさんの人が巻き込まれて甚大な被害が出る危険性があります。そのときに活躍するのが、屋内消火栓やスプリンクラーといった消火設備です。

今回は各種消火設備の一部である「消火水槽」にスポットを当てて、詳しく解説していきます。

目次

消火水槽とは

不特定多数の人が利用する大きな建物や施設は、火災が発生したときに甚大な被害が生じるリスクがあります。

そこで、消防法第17条第1項防火対象物と定める建物には、防火管理者を置く・消防用設備を設置するなどの防火管理が義務付けられています。

火災が発生すると、近隣の河川や海、プール、公設消火栓(※)や防火水槽など、あらゆる消防水利を駆使して消火活動が行われます。

しかし、大きな建物や施設の消火活動には内部からの放水が欠かせないため、消火設備を設置しておく必要があるのです。

建築物に設ける消火設備には、屋内外の私設消火栓(※)・スプリンクラー・ドレンチャー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備などがあります。

これらの消火設備を使うときの消防用水を貯めておくための水槽、それが「消火水槽」です。

※自治体などが設置する消火栓を「公設消火栓」、個人や企業が建物内や私有地内に設置する「私設消火栓」と呼びます。

消火設備に必要な3つの水槽

屋内消火栓やスプリンクラーなどの消火設備が作動すると、あらかじめ貯めておいた消防用水がポンプで汲み上げられ、建物内に張りめぐらされた配管に水が放出されて、放水が可能になります。

このとき消火活動に十分な量の水を確保し、重力に逆らって大量の水を一気に汲み上げるために、消防設備には3つの水槽が存在しています。

消火水槽

この記事の主役でもある「消火水槽」は、放水用の水を貯蔵する水槽、つまり水源用水槽です。3つの水槽のなかで1番大きく、多くの場合は地下に設置されていますが、地上に設置するタイプの消火水槽もあります。

有事の際はここに貯めている水が消火ポンプで加圧送水され、配管を伝って各消防設備の放水口(消火栓のバルブやスプリンクラーヘッドなど)に届けられます。

材質はコンクリートや鋼板などの不燃材料で急激な劣化は考えにくいのですが、消火活動の要となる水源を確保する重要な設備であり、常に万全の状態を保っておく必要があります。

補給水槽

消火水槽に貯めている水を汲み上げる消火ポンプが作動するためには、建物内に張りめぐらされた配管の内部が、常に水で満たされていなければなりません。

配管の内部を水で満たしておくための水を貯める水槽が「補給水槽」で、「消火用補給水槽」とも呼ばれています。

重力を利用して配管に水を流すので、屋上などに設置されていることが多いです。風雨にさらされるため劣化しやすく、必然的に更新頻度も高くなります。

補給水槽はステンレス・鋼板・FRPなどの材質で作られており、現在は腐食に強いステンレス製が主流になっているようです。

呼水槽(こすいそう)

「呼水槽」は消火ポンプと地下式消火水槽をつなぐ配管を水で満たしておくために必要となる水槽で、消火水槽が地下にある場合に設置されています。

消火ポンプを起動して地下の消火水槽から水を吸い上げるためには「呼び水」が必要です。

しかし有事のたびに注水作業をすることはできないので、呼水槽を設置して常に配管を満水にしておくのです。

地下式の消火水槽が設置されている「吸い上げ方式」の消火ポンプには、必ず呼水槽がついています。消火水槽が地上式であれば、呼水槽を設ける必要はありません。

消火水槽の設置基準と有効水量

消火水槽の設置基準や有効水量は消防法施行令で定められています。

第二款で各消火設備についての基準を定めた「消火設備に関する基準」、第五款で「消防用水に関する基準」を確認することができます。

ただ、消火設備ごとに設置基準が異なっているうえ、有効水量は設備の方式によっても違います。また、所轄する自治体や消防によって基準が変わってくる可能性もあります。

有効水量を算出する計算式も複雑なので、消火水槽を設置する際には最寄りの自治体や消防、消火設備の専門家に必ず相談しましょう。

消火水槽のトラブル

消火水槽にトラブルが起こると、いざというときに消防用水を確保できず、被害が拡大してしまう恐れがあります。

有事の際に人命を守るためには、消火設備が常に万全の状態を保っていなければならないので、消火水槽にも定期的な点検・修繕・更新が必要です。

ここでは、考えられる消火水槽のトラブルを3つご紹介します。

オーバーフロー

オーバーフローとは水槽に貯めた水があふれ出ることです。多くの場合、ボールタップ(水面の上下変動を感知して自動的に弁を開閉させる装置)や、定水位弁(水位を一定に保つためのバルブ)が故障することによって発生します。

満水警報を発する装置や、水の出口となるオーバーフロー管が設置されていない場合には、特に注意を払っておく必要があります。

消火水槽の水があふれ出ると一面が水浸しになってしまうばかりか、水の圧力で水槽が壊れてしまうリスクもあるからです。

減水

消火水槽は常に有効水量を満たしていなければなりません。

有効水量は消火設備ごとに異なっていますが、それぞれの有効水量を満たしていなければ「消防用水を確保できない・正常または有効に作動しない」という点は、どの消火設備でも同じです。

消火水槽の水が減ってしまうと消火の要である水が確保できないので、消火水槽には減水警報の設置が推奨されています。

今のところ消防法では義務付けられていませんが、各自治体や消防が示す基準では、減水警報の設置を規定していることも少なくありません。

また、消火水槽が地下にありポンプアップが必要な消火設備については、補給水槽や呼水槽にも減水警報を設置したほうが安心と言えるでしょう。

腐食・劣化

水漏れや動作不良を防ぐためには、設備全体の腐食や劣化に気を配っておく必要があります。

消防法消防法施行令に基づいて各自治体や消防が定める消火設備の基準では、「消防用水の水源には上水道水を用いること」が原則である場合がほとんどです。

しかし、温泉・工業用水・井戸水といった上水道水以外の水が使われているケースがあるのも事実です。

コストや手間の削減、資源の有効活用などが目的かと思われますが、やはり推奨はできません。

水槽本体や付随する設備(配管など)が腐食しやすくなったり、オーバーフローしたときに建物を傷めてしまったりするリスクがあるからです。

万が一、上水道水以外の水を消火水槽に貯めている場合は、腐食・劣化によるトラブルの増加を念頭に置く必要があるでしょう。

消火設備の点検義務

消火水槽を含む消火設備は、消防法第17条に基づく「消防用設備等点検報告制度」の対象です。

消防法第17条第1項が定める防火対象物の関係者は、消防用設備や特殊消防用設備の点検を定期的に実施し、管轄の消防署に点検結果を報告しなければなりません。

点検を怠ったり虚偽の報告をしたりすると、罰金や拘留などの罰則が課せられることもあります。防火対象物に指定された建物の所有者または管理者の方は、消火設備の点検・報告を必ず行いましょう。

参考:点検報告制度に係る罰則規定について|総務省消防庁

点検の頻度

消防用設備等点検報告制度で義務付けられている点検には、機器点検総合点検があります。

機器点検は、消防設備の配置が適正かどうかをチェックしたり、外観や簡易な操作から損傷の有無などを判断する点検で、6ヶ月に1回の頻度で実施します。

総合点検は、消防用設備の全部または一部を作動させて、きちんと機能するかどうかを総合的に判断する点検で、1年に1回の頻度で実施します。

点検者の条件

消防法第17条第一項が定める防火対象物においては、有資格者(消防設備士または消防設備点検資格者)による消防設備点検が義務付けられているため、業者に依頼するのが一般的です。

防火対象物ではない建物の点検は、防火管理者などが実施することもできます。

ただし、適切に点検することが難しい設備(スプリンクラーや自動火災報知設備)については、法による義務付けがなくても、有資格者点検が推奨されているようです。

参考:有資格者による点検等について(案)|総務省消防庁

消火水槽の点検・工事を依頼しよう!

火災はいつ発生するか予測できません。いざというときに消火設備が正常に動かなければ、被害はどんどん拡大してしまいます。

有事の際に人命を守るため、消火水槽を含む消火設備には定期的な点検が必須なのです。

法で定められた点検はもちろん、トラブルの様子が見られたらすぐに点検を行い、必要に応じて改修工事や更新の手配をしてください。

費用相場は?

消火水槽の点検や改修工事について、具体的な費用を公開している業者は見つかりませんでした。

特に改修工事についてはトラブルの規模によって費用が大きく変わってくるので、金額を明示しにくいという実情があります。

また、点検についても業者によって価格の上下があるので、まずは見積りを取ってみることをおすすめします。できれば相見積りを取って費用を比較しながら検討してみてください。

弊社でも消火水槽の点検・改修工事の見積りが可能です。ぜひお問い合わせください。

業者選びのコツ

消火水槽を含む消火設備の点検や改修工事を行うにあたって、どの業者に依頼するべきか迷っている方のために、業者選びのコツをお伝えします。

消火設備の点検を依頼するときは、実績が豊富で点検のポイントを熟知した業者を選びましょう。また、異常が見つかったら即座に対応できるよう、工事まで依頼できるところがおすすめです。

点検は健康診断と同じです。少しの見落としが大変なトラブルにつながることもありますし、対応が遅れるほど状態が悪化していくため、トラブルを確実に見つけること・見つけたらすぐに対応することが重要なのです。

弊社は有資格者による消火設備点検の実績が豊富で、点検から改修工事までをワンストップで提供しています。

消火水槽の点検・改修工事はトネクションまで!

消火活動に欠かせない水を貯蔵する消火水槽は、消火設備の生命線です。肝心の水がなければ、どんなに優れた消火能力を持っている設備も意味がありません。

火災は起こらない・起こさないのが一番ですが、もし発生してしまったときに住民や利用者の命を守り、建物の被害を最小限に抑えるためにも、消火水槽の点検・改修工事をしっかりと行いましょう。

弊社でも消火水槽を含む消火設備の点検・改修工事が可能です。

興味のある方はぜひ以下のお見積りフォームから、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の担当スタッフ

建築・消防ラボのお問い合わせ受付/見積もり作成などを担当。消防工事・消防点検・建物工事・建物点検に関する幅広い見積もり依頼を受け付けております。業歴60年のなかで様々な点検/施工実績がございます。社内にいる各種スペシャリストと連携してサービスを運営しております。

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