スプリンクラーヘッド|種類や特徴・設置基準や施工までの流れを解説

スプリンクラーヘッドとは|種類や特徴・設置基準を解説

スプリンクラーヘッドは、火災の発生から放水まで自動でおこなう消防設備です。スプリンクラーヘッドは放水量が多いため、火災の初期段階で鎮火する効果が期待できます。そこでこの記事では、スプリンクラーヘッドの設置基準について、またスプリンクラーの種類別に、どのような場所での活用に適しているかを解説します。

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目次

スプリンクラーヘッドとは

スプリンクラーヘッドは、古くから用いられている初期消火設備のひとつであるスプリンクラーのパーツです。スプリンクラー本体から配管を通して引いた水を放出する部分が、スプリンクラーヘッドにあたります。

引用元:一般社団法人東京防災設備保守協会

スプリンクラーを設置する際は、天井裏に配水管を設置します。スプリンクラーヘッドはメインの配水管から分岐した管の先端に取り付ける部品です。天井からスプリンクラーヘッドの先端部分が顔を出した状態になるように設置します。

スプリンクラーの種類と仕組み

スプリンクラーには次の3つの種類があります。

  • 閉鎖型
  • 開放型
  • 放水型

それぞれ火災による熱を感知する感熱体の有無や放水圧力の規定が異なります。

スプリンクラーの種類

スプリンクラーの種類特徴
閉鎖型感熱体がある天井高さが10m以下(物販用途などは6m以下)
開放型感熱体がない放水圧力が0.1MPa以上であり、かつ放水量が80l/秒以上
放水型放水銃や側壁散水ヘッド(自動もしくは手動で広範囲に散水できるヘッド)放水量5l/秒.㎡(指定可燃物を貯蔵もしくは取り扱う部分については10l/秒.㎡)以上

閉鎖型

閉鎖型は、広く用いられているスプリンクラーです。

閉鎖型のスプリンクラーには感熱体が搭載されています。感熱体の役割は次の2つです。

  • 火災の発生を熱によって感知する
  • スプリンクラーの水を堰き止める

平常時は、感熱体がスプリンクラーヘッドのフタの役割を果たしています。

しかし火災が発生して熱を感知すると、感熱体は変形もしくは破損します。これによってフタが外れ、堰き止められていたスプリンクラーの水が一気に放出される仕組みです。

引用元:日本消防検定協会

閉鎖型のスプリンクラーを設置できる場所には、天井の高さの規定が設けられています。天井の位置が高すぎると熱を感知するのが遅れ、初期段階で消火するスプリンクラーの機能が果たせません。

そのため一部の例外を除いて閉鎖型スプリンクラーは、天井の高さが10m以下の居室で設置するよう定められています。

また閉鎖型スプリンクラーには、3つの種類があります。

  • 湿式
  • 乾式
  • 予作動作式

それぞれ、使用される建物の種類が異なります。

閉鎖式スプリンクラーの種類

種類特徴
湿式一般の建物で利用されるスプリンクラーヘッドまで常に水が充満している感熱体がフタの役割を果たしている天井の高さが10m以下の居室で使用可能
乾式寒冷地でよく利用されるスプリンクラーヘッドの感熱体が作動すると弁が開いて放水される天井の高さが10m以下の居室で使用可能
予作動式病院や電算室、共同住宅で用いられるスプリンクラーヘッド感熱体と火災感知器の両方が作動しないと放水しない天井の高さが10mを超える箇所で使用

湿式

閉鎖型のなかでも、一般の建築物を中心に広く使用されているのが湿式スプリンクラーです。

湿式の場合、スプリンクラーヘッドの内部まで常に水が充満しています。そのため感熱体が熱によって変形もしくは破損すると、すぐに放水される仕組みです。

熱を感知してからすぐに放水されるため、初期消火機能が高いのが湿式スプリンクラーの特徴です。しかし寒冷地域のように、配管やスプリンクラーヘッド内の水が凍結する可能性のある場合は、湿式スプリンクラーは適しません。

乾式

乾式スプリンクラーは、スプリンクラーヘッドに通じた配管の途中の部分に弁があり、水を堰き止めています。外気温の影響を受けにくいため、配管内の水が凍結する可能性がある寒冷地で用いられるスプリンクラーです。

感熱体が熱を感知すると、配管内の弁が開いて放水が始まる仕組みです。

予作動式

予作動式スプリンクラーは、感熱体の誤作動があった場合に甚大な被害をもたらす箇所で使用されるスプリンクラーです。例えば病院や電算室、重要文化財を貯蔵した施設がこれに当たります。

湿式や乾式では、感熱体が熱を感知すれば速やかに放水されます。しかし予作動式では、感熱体に加えて別途設置されている火災感知器が作動するまで放水弁は開きません

火災の発生を慎重に確認して対処しなければならない建物で使用するのが、予作動式スプリンクラーです。

開放型

開放型スプリンクラーの場合、スプリンクラーヘッドに感熱体が搭載されていません。火災報知器が作動すると一斉に放水弁が開く、もしくは手動で放水弁を解放する仕組みを採用しています。

開放型の場合、短時間のうちに大量の放水ができるのが特徴です。

そのため劇場や舞台のように多くの人員を収容する施設のほか、化学工場や倉庫といった可燃性の高い物品を保管する建物に使用されます。

放水型

放水型は、展示場のように天井が10mを超える建物に設置されるスプリンクラーです。

居室のサイズによってスプリンクラーヘッドが天井に固定されたタイプのほか、広範囲に水を放出できる放水銃タイプのスプリンクラーヘッドを用いることもあります。

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閉鎖式スプリンクラーのスプリンクラーヘッドの種類

閉鎖式スプリンクラーのスプリンクラーヘッドは、散水の状態によって3種類に分類されます。

  • 標準型ヘッド
  • 小区画型ヘッド
  • 側壁型ヘッド

標準型のスプリンクラーヘッドは、円を描くように散水します。

引用元:日本消防検定協会

小区画型ヘッドでは、壁面を濡らしながら居室全体に放水します。

引用元:日本消防検定協会

側壁型ヘッドは、半円を描くように散水するのが特徴です。

引用元:日本消防検定協会

さらに、スプリンクラーヘッドを取り付ける方向を、上向きもしくは下向きにするかの選択も可能です。

スプリンクラーの設置が必要な場所

スプリンクラーの設置基準は、消防法施工令第12条で厳密に定められています。概要は次の通りです。

スプリンクラーを設置すべき建築物の基準

スクロールできます
建物の種類地上1〜3階の場合の延べ床面積地上4〜10階の場合の延べ床面積地上11階以上の場合の延べ床面積地階もしくは窓がない場合の延べ床面積
劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場6000㎡
(平屋建以外)
1500㎡必須1000㎡
キャバレー・カフェー・ナイトクラブなど遊技場・ダンスホール・カラオケボックス・漫画喫茶・ネットカフェ・個室ビデオなど6000㎡
(平屋建以外)
1000㎡必須1000㎡
飲食店・待合・料理店など6000㎡(平屋建以外)1500㎡必須1000㎡
百貨店・マーケットその他の物品販売を営む店舗・展示場3000㎡(平屋建以外)1000㎡必須1000㎡
旅館・ホテル・宿泊所など6000㎡(平屋建以外)1500㎡必須1000㎡
寄宿舎・下宿・共同住宅11階以上
病院、診療所又は助産所必須1500㎡必須1000㎡
幼稚園又は特別支援学校6000㎡(平屋建以外)1500㎡必須1000㎡
学校全般・図書館・博物館・美術館等11階以上
公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場の類6000㎡(平屋建以外)1500㎡必須1000㎡
上記公衆浴場以外の公衆浴場・車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場・神社、寺院、教会の類・工場又は作業場・映画スタジオ又はテレビスタジオ・自動車車庫、駐車場・飛行機又は回転翼航空機の格納庫11階以上
倉庫ラック式で天井高さが10mを超え、かつ、延べ面積が700㎡以上11階以上
全各項に該当しない事業場(事務所など)11階以上

参照元:消防法施工令第12条

なお消防法の改正に伴い、平成28年4月から避難時に患者の介助が必要な病院や診療所については、延べ床面積を問わずスプリンクラー設備の設置が義務付けられています。

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スプリンクラーヘッドの設置基準

スプリンクラーヘッドの設置基準は消防法によって厳密に定められています

室内にスプリンクラーの水を満遍なく届けられる位置に設置することが原則です。これに付随して次のような条件も考慮し、安全基準を満たすように綿密な計算した上で、スプリンクラーヘッドの設置間隔や設置個数を決定する必要があります。

  • 居室の用途
  • 居室の延べ床面積z
  • 居室の階層
  • 天井の高さ
  • 居室の配管や棚の設置状況
  • スプリンクラーヘッドと床の水平距離
  • スプリンクラーヘッドの種類
  • スプリンクラーヘッドの放水量
  • スプリンクラーの水量

例えば広く活用されている閉鎖式スプリンクラーヘッドの設置場所に関する消防法の規定には次のようなものがあります。

消防法に定められた閉鎖式スプリクラーヘッドの設置基準】

スプリンクラーヘッドのデフレクターと天井の距離は30㎝以下とする
30cmを超える場合は、別途認定を受けた機器の設置や、開放型のスプリンクラーヘッドの設置が必要
(消防法施行規則第13条の2の4の1のハ)
幅もしくは奥行きが1.2mを超えるダクト、棚といった散水障害になるものがある場合、これらの下部にもスプリンクラーヘッドを設ける
(消防法施行規則第13条の2の4の1のロ)
40㎝以上突出した梁のような部分によって区切られた構造をした天井の場合は、区切られた部分ごとにスプリンクラーヘッドを設置する
ただし区切られた間隔の直線での遠隔距離が、中心で1.8m以下の場合は、この限りではない
(消防法施行規則第13条の2の4の1のイ)

なおデフレクターとは、放水した水を広範囲に拡散させるための機器です。

引用元:日本消防検定協会

スプリンクラーヘッドの設置位置や設置個数は、スプリンクラーの消火性能を大きく左右します。スプリンクラーヘッドの位置や数が適切に設置されていない場合、スプリンクラーによる初期消化が実現せず、火災が拡大する可能性も否めません。

建物を利用する人の安全を守る目的で、スプリンクラーやスプリンクラーヘッドの設置基準は厳密に定められています。最新の消防法に関する知識や施工経験がないと、スプリンクラーやスプリンクラーヘッドの設置における適切な設計はできません。

建物の新設や増設によってスプリンクラーを設置しなければならなくなった場合は、知識と豊富な設置経験のある施工業者にご依頼ください。

スプリンクラーヘッドの作動温度の基準

閉鎖型スプリンクラーヘッドの感熱体に使われる素材には次の2種類があります。

  • 熱で溶ける特殊素材
  • ガラスのなかにアルコール系の液体を入れ、熱で液体が膨張するとガラスが破損する仕組み

感熱体が作動し始める温度の設定は、3パターン(72℃・96℃・139℃)あり、設置場所によって使い分けます。

スプリンクラーヘッドの作動温度と設置場所

作動温度設置場所
96℃キッチンのような高温を発生する場所
72℃一般的な建物
139℃サウナのような高温を発生する場所

なおスプリンクラーヘッドには、カバーが取り付けられていることがあります。これは何らかの物品がぶつかった衝撃でスプリンクラーヘッドが破損するのを防ぐものです。カバーがついていることで熱の感知ができないといったことはないのでご安心ください。

またスプリンクラーヘッドのカバーが汚れたり破損したりした場合は、交換することもできます。カバーを外したことでスプリンクラーが誤作動することはありません。しかしカバーのタイプによって取り外し方が異なります。

樹脂製のプレートであれば、下方に引っ張ると簡単に外れますが、金属製のスプリンクラーヘッドのカバーの場合、ヘッド自体を取り外さなくてはなりません。不安がある場合は、専門の業者にカバーの取り替え作業を依頼してください。

スプリンクラーヘッドの設置個数

閉鎖型スプリンクラーヘッドは、設置するヘッドの個数と配管サイズが規定されています。

標準型スプリンクラーヘッドの場合

ヘッドの個数2以下3以下5以下10以下20以下21以上
配管口径(㎜)25以上32以上40以上50以上65以上80以上

小区画型スプリンクラーヘッドの場合

ヘッドの個数3以下4以下8以下9以下
配管口径(㎜)25以上32以上40以上50以上

なおスプリンクラーヘッドは等間隔で均等に設置することが大切です。

スプリンクラー設置の流れ

スプリンクラーを設置する必要が生じた場合は、次の手順で手配を進めます。

  1. 施工業者から見積もりをとる
  2. 施工業者がスプリンクラーの設置を設計
  3. 所轄消防署へスプリンクラー設備の着工届を提出
  4. スプリンクラー設備の施工
  5. 消防署による中間検査(新築のみ)
  6. 消防検査

まず、複数の施工業者から相見積もりをとります。このときスプリンクラー設置にかかる料金だけでなく、見積もり作成の対応速度や、不明点があった際に誠実な対応があるか否か、また甲種消防設備士が在籍していることもチェックしてください。

施工を依頼する業者を決定したら、所轄の消防署にスプリンクラー設備の着工届を提出します。着工届の作成は、国家資格を取得した甲種消防設備士しか作れない独占業務です。

スプリンクラーの施工を終えたら、消防署による立ち会い検査を受けます。立ち会い検査に合格すれば、施工は完了です。

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スプリンクラーやスプリンクラーヘッドを適切に設置するためには、消防法に加えて住宅の構造に関する専門的な知識が必要です。またスプリンクラーは設置して終わりではありません。万が一の際に問題なく作動することを確認するための、定期的な点検も重要です。

実績があり信頼できる業者に施工を依頼すれば、部品の交換やメンテナンス、定期点検まで安心して任せることができます

消防と建築のスペシャリストであるトネクションは、60年余りの実績と確かな技術で、スプリンクラーの設置から設置後のケアまで一貫して対応いたします。スプリンクラーのことなら、トネクションにぜひお任せください。

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この記事の担当スタッフ

建築・消防ラボのお問い合わせ受付/見積もり作成などを担当。消防工事・消防点検・建物工事・建物点検に関する幅広い見積もり依頼を受け付けております。業歴60年のなかで様々な点検/施工実績がございます。社内にいる各種スペシャリストと連携してサービスを運営しております。

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