防火水槽って何?消火栓や消火水槽との違い、点検・維持管理についても解説!
火災が発生したとき、消火活動には大量の水が必要になります。河川や海などが近くにない場所には、あらかじめ消防用水を貯めておくための設備や、水道水を有効活用するための設備が配置されています。今回は、消火活動に備えて人工的に設置される消防水利のひとつ「防火水槽」について、詳しく解説していきます。
防火水槽は消防水利のひとつ
特に火災発生時の消火活動には水が欠かせません。消火をはじめとした消防活動に必要な水を確保するための水利施設は「消防水利」と呼ばれ、自然の水利(海や河川など)を利用したもののほか、町中には人工的な消防水利も設置されています。
消防水利は有事にしっかり活用できるよう厳しい設置基準が設けられており、消防庁が消防法20条第1項に基づく「消防水利の基準」を勧告しています。
引用元:消防水利の基準|総務省消防庁
消防水利の例
消防庁が定める「消防水利の基準」では、消防水利の例として以下のようなものが挙げられています。
- 消火栓
- 私設消火栓
- 防火水槽
- プール
- 河川、溝など
- 堀、池など
- 海、湖など
- 井戸
- 下水道
上記のうち消火栓・私設消火栓と防火水槽は、自然の水利やプールなど既存の設備からの取水が難しい場所において、消防用水を確保するために設置される設備です。
消火栓と防火水槽の違い
消火栓と防火水槽は、どちらも火災発生時に消防隊や消防団が使用する消防水利ですが、仕組みが異なります。
消火栓は水道管から消防水槽に水を供給する設備で、道路などに埋められた水道本管に取り付けられています。
消火栓には、地方自治体などが設置する「公設消火栓」と、個人や企業が私有地に設置する「私設消火栓」があります。
防火水槽は消防用水を貯めておくための貯水設備です。公園や公共機関の地中に埋設されているものが多いですが、地上式の防火水槽もあります。
防火水槽はどちらかというと消火栓の補助的な位置づけですが、災害で消火栓が利用できなくなった場合などには、防火水槽の水が非常に重要な役割を担います。
消防水利の基準
消防水利には給水能力や配置間隔などに厳しい基準が設けられており、防火水槽もこれらの条件を満たす必要があります。
消防水利に必要な給水能力
消防水利に必要とされる給水能力は以下のとおりで、防火水槽に関わるのは(1)の条件です。
(1)消防水利は、常時貯水量が40㎥以上又は取水可能水量が毎分一㎥以上で、かつ、連続40分以上の給水能力を有するものでなければならない。
(2) 消火栓は、呼称65mmの口径を有するもので、直径150mm以上の管に取り付けられていなければならない。ただし、管網の一辺が180mメートル以下となるように配管されている場合は、75mmミリメートル以上とすることができる。
(3)私設消火栓の水源は、5個の私設消火栓を同時に開弁したとき、第1項に規定する給水能力を有するものでなければならない。
引用元:消防水利の基準|総務省消防庁
消防水利の設置間隔
消防水利は、防火対象物からひとつの消防水利までの間隔が一定以下になるように配置しなければなりません。
用途地域(市街地および 準市街地) | 平均風速毎秒4m未満の場所 | 平均風速が毎秒4m以上の場所 |
---|---|---|
近隣商業地域 商業地域 工業地域 工業専用地域 | 半径100m以下 | 半径80m以下 |
その他の地域 | 半径120m以下 | 半径100m以下 |
- 市街地・準市街地については、「消防力の整備方針(平成十二年消防庁告示第1号)」第2条第1号で確認できます。
- 消防水利の配置は、消火栓のみに片寄らないように考慮する必要があります。
その他の条件
「消防水利の基準」第6条には以下のような条件が定められており、防火水槽もこれらの条件を満たす必要があります。
(1)地盤面からの落差が4.5m以下であること。
引用元:消防水利の基準|総務省消防庁
(2)取水部分の水深が0.5m以上であること。
(3)消防ポンプ自動車が容易に部署できること。
(4)吸管投入孔のある場合は、その一辺が0.6m以上または直径が0.6m以上であること。
防火水槽の規格
防火水槽の詳しい規格は、消防庁の「消防水利の基準」に基づいて地方自治体ごとに定められているようです。
東京都調布市と滋賀県甲賀市が資料を公開していましたので、参考にしてみてください。
参考:防火水槽構造基準|東京都調布市
参考:消防水利に関する基準|滋賀県甲賀市
防火水槽は公共施設
防火水槽は消防庁が定める消防水利のひとつであり、公設消火栓と同様に「公共施設」という位置づけになります。
消火水槽と防火水槽の違い
防火水槽と似た名前の設備に「消火水槽」があります。
消火水槽は、建物に設置された消火設備(屋内消火栓やスプリンクラーなど)の水源となる水を貯めておくための水槽です。
多くの場合は地下に設置されていますが、地上式の消火水槽もあります。
また、地下から水をくみ上げる消火用ポンプを作動させるために必要な「消火用補給水槽」というものもあります。こちらは、屋上などに設置されていることが多いです。
防火水槽の種類
地中に埋設する地中梁(ちちゅうばり)水槽のほか、地上に設置する地上タンク型の水槽、衝撃に強く漏水しにくい耐震性貯水槽、飲料水兼用型の防火水槽などがあります。
近年は大規模災害が増えていることもあり、国も地方自治体も防災対策に積極的です。防火水槽は公共の消防防災設備なので、設置や整備にあたって国から補助金が出ることもあります。
おそらく今後は、災害に備えた耐震性貯水槽や飲料水兼用型の防火水槽が増えてくるでしょう。
参考:消防防災施設等整備費補助金(告示、要綱等)|総務省消防庁
防火水槽の設置場所
防火水槽は、国や地方自治体が管理する公園や緑地、広場、公民館の敷地などに設置されていることが多いです。
防火水槽がある場所には、赤地に白抜きの文字で「防火水槽」や「防火水そう」と書かれた丸い標識が設置されています。
しかし、配置間隔の条件がクリアできなかったり公有地がなかったりする場合は、個人の土地を買い取る・借地するなどの方法で、防火水槽が設置されるケースもあるようです。
点検・維持管理について
消防設備は、いざというときに「故障や破損で使えない」ということがないよう、定期的に点検を実施し、異常があれば改修工事を行う必要があります。
防火水槽と消火水槽(消火用補給水槽)の点検・維持管理について解説します。
防火水槽の場合
防火水槽の所有者は地方自治体(市町村)であり、設置や点検・維持管理は地方自治体の役割です。市町村と管轄の消防署が協議して整備計画を立てます。
防火水槽を含む消防設備や消防用水、警報設備、避難設備などには、消防法第17条に基づいて定期的な点検と報告が義務付けられています。(消防用設備等点検報告制度)
外観や簡易な操作で判別できる機器点検は6ヶ月に1回以上、消防用設備の全部または一部を作動させて行う総合点検は1年に1回以上の頻度で行わなければなりません。
消火水槽の場合
消火水槽や消火用補給水槽の設置および点検・維持管理を担うのは、消火水槽が設置されている建物の所有者または管理者です。
こちらも防火水槽と同様に「消防用設備等点検報告制度」の対象になります。しかし公共施設ではないため、建物を所有または管理している個人や企業が、点検・工事の手配をして費用も負担します。
点検や工事はどうやって行う?
防火水槽は消防職員も定期的に点検していますが、法で定められた点検は保守点検業者に依頼するのが一般的です。
異常や不良箇所が見つかったときに速やかに対処できるよう、改修工事もできる業者を選ぶことをおすすめします。
点検や改修にかかる費用相場はほとんど公開されていません。費用が知りたい場合は、いくつかの業者から見積りを取ってみましょう。
弊社でも、防火水槽の点検と改修工事を行っていますので、ぜひお問い合わせください。
防火水槽の点検・改修工事はトネクションまで!
防火水槽は消火栓と並ぶ重要な消防水利です。地震などの災害が発生して、万が一消火栓が使えなくなったときには、防火水槽が唯一の給水源になる可能性もあります。
いざというときに地域の人々を守るために、いつも正常に使える状態を維持しましょう。
弊社はさまざまな建物や設備の点検実績があり、改修工事までワンストップで提供しています。
消火水槽や消火用補給水槽はもちろん、防火水槽の点検・改修工事も行っていますので、ぜひ以下のお見積りフォームから、お気軽にお問い合わせください。