ホース格納箱とは?|設置基準や使い方・買い替えの手順を解説
消火栓ホース格納箱は、屋外の消火栓に隣接して設定されている赤い箱です。消火栓から水を取るためのホースや金具が収納されています。しかし屋外に設置されていることから風雨に晒されるため、老朽化は避けられません。定期的に点検して維持管理することが重要です。そこでこの記事では、ホース格納箱の設置基準や使い方、また新設や移設、買い替えの際の手順について解説します。
ホース格納箱とは
ホース格納箱とは、消火栓の近くに設置されている赤い金属製の箱のことです。
ホース格納箱のなかには、次の4点が収納されています。
- ホース
- 消火栓開閉器
- スタンドパイプ
- 筒先
火災が発生しているのを発見した際、消火栓から火災現場に放水するために必要な機器が一式収納されているのが、ホース格納箱です。
なおスタンドパイプは地域によって含まれていないこともあります。
ホース格納箱の役割
ホース格納箱に収納されている消火機器は、誰でも使用できます。火災の発生に気づいたタイミングで速やかに消火栓にホースをつないで消火活動を行うことで、大規模火災に発展するのを食い止めることが可能です。
火災が発生した際は、初期消火が重要です。しかし交通事情や地形、また天災によって各所で救急要請があった場合は、消防車輌の到着が遅れる可能性もあります。こういったケースでも迅速な初期消火活動を行えるように設置されているのが、ホース格納箱です。
ホース格納箱の管理者
ホース格納箱は地域の住人が自発的に火災の初期消火活動を行うために設置されている機器です。そのため地域の自治体が管理を任されています。
ホース格納箱が倒れているのを発見した場合や、機器が激しく劣化しているのに気づいた場合は、ホース格納箱がある地域を管轄する自治体にご一報ください。管理者が不明な場合は、役所に問い合わせると管轄する自治体がわかります。
ホース格納箱の使い方
ホース格納箱のなかに収納されているホースで消火活動を行う場合は、必ず4人以上の人員を集めてください。消火栓の水圧は高いため、人数が揃わないまま消火作業を行うと、思わぬ危険に巻き込まれる可能性があります。
4人の役割分担は次の通りです。
- 消火栓担当:1名
- ホース担当:1名
- 放水担当:2名(メインで放水する人1名、補助者1名)
消火担当者の作業手順
消火担当者は、開閉器とスタンドパイプを持って、消火栓のフタを開けに行きます。
消火栓は地面にある黄色もしくはオレンジ色のフタを開けた中にあります。マンホールのような外観ですが、「消火栓」もしくは「防火水そう」と書かれているのでご確認ください。
消火栓のフタを開ける
消火栓のフタには角形と丸型があります。
角形の場合は、開閉器の尖った部分を穴に差し込み、テコの原理でフタを持ち上げてください。
丸型の場合は、開閉器の先端部分を穴に差し込んだら手前に引っ張り、180度後方へ回すとフタが開きます。
消火栓のフタは重いため、指や足を挟んだり、足元に落としたりしないように細心の注意を払って作業してください。
開栓する
消火栓内の吐出口のキャップを外し、スタンドパイプを取り付けたら、開閉器を消火栓内の開閉栓に差し込みます。
開閉栓を押し込んでから左に回すと、水が流れ始めます。放水担当者の動きを確認し連携をとりながら、少しずつ送水を開始してください。突然大量に放水することは、大変危険です。少しずつ送水することが、安全な消火活動のために欠かせません。
なお消防隊が到着したら一旦送水を停止し、消防隊の指示に従ってください。
ホース担当者の作業手順
ホース担当者は、ホース格納箱のなかからスタンドパイプとホースを取り出してください。スタンドパイプの先端にホースのメスの金具を接続したら、オスの金具を持って火災現場方向に走ります。
ホースは最大3本、合計60メートルまで接続可能です。ホースが足りない場合は別のホースを接続してホースを延長します。途中でホースが折れている場合、水が出ないことがあります。ホース担当の補助者はよじれやねじれを解消してください。
ホースを接続するときは、カチッと音がするのを確認します。音がしない場合、ホースが十分にはまっていません。ホースの接続が不完全なまま放水すると、激しい水圧による負傷者を出す可能性があります。十分注意してください。
火災現場の近くで放水担当者が待っています。放水担当者が持っている筒先にホースのオスの金具を接続したら放水担当者の後方に移動し、ホースを持って放水作業を補助してください。
放水担当者の作業手順
放水担当者とその補助者は、ホース格納箱から筒先を取り出したら、火災現場の方へ走ります。放水位置は火元に近すぎず、足場の安定した場所に確保してください。
ホース担当者がホースを運んできたら、筒先と接続します。筒先をしっかり握りながら腰を落として、安定する姿勢を見つけてください。体勢が整ったら消火栓担当者と連携をとり、放水を開始します。
このとき「放水始め」と大きな声をあげて、消防活動を行っている全員に放水することを伝えてください。
筒先を燃えている物に向けて放水するのが消火のポイントです。水の勢いは強いので、放水は必ず補助者と一緒に行ってください。
放水を停止するときは「放水やめ」と大きな声で合図します。
ホース格納箱の設置基準
ホース格納箱の設置基準は、消防法施行規則第22条の第2項に定められています。
- 屋外消火栓設備の放水用器具を格納する箱(ホース格納箱)は、屋外消火栓からの歩行距離が5メートル以内の箇所に設ける
- ただし屋外消火栓に面する建築物の外壁の見やすい箇所に設けるときは、この限りでない
緊急時に速やかに消火栓にホースを接続して消化活動に入れるよう、基本は消火栓から5メートル程度の距離に設置することが推奨されています。ただ立地や周囲の環境によって難しい場合は、視認性が悪くならない範囲で設置することも可能です。
ホース格納箱を新設・更新する手順
ホース格納箱は、消防第33条の2のなかで、消防設備士でなくても行える消防用設備として挙げられています。そのためホース格納箱を管理している地域の自治体の判断で新設したり、老朽化に伴って買い換えたりといった対応が可能です。
地方自治体によっては、ホース格納箱の購入や買い替えに伴ってかかる費用を補助する制度を設けています。費用を抑えながら格納ホースを導入もしくは買い替えするなら、補助制度の有無を自治体にお問い合わせください。
ただし予算の捻出ができるタイミングのみ受け付けており、予算の上限に達した段階で助成を終了する、といったケースもあります。必要な書類を把握する意味でも、ホース格納箱を購入する前に確認すると安心です。
ホース格納箱を購入する方法
ホース格納箱やステッカーは、インターネットショップで購入できます。
「ホース格納箱 カタログ」や「ホース格納箱 ステッカー」で検索すると、電子カタログからホース格納箱のみ、もしくはホース格納箱と書かれたステッカーのみを購入できます。
しかしホース格納箱は金属製ですから重量があります。激しい風雨や地震といった天災にさらされても容易に倒れることのないように設置するなら、消防機器に詳しい専門の業者に依頼してください。
消火設備の専門業者に依頼すれば、設置場所に最適な機器も案内できます。カタログに寸法や仕様、規格は記載されていますが、数字を見ただけでは分かりにくいことも多々あります。
消火設備の専門業者なら、商品の仕様を問い合わせたり、消防設備の管理の仕方について質問したりと、きめ細かく対応可能です。
ホース格納箱は定期点検して地域の安全管理に役立てよう!
ホース格納箱は、地域を火災から守るために有効な機器を収納したものです。しかし屋外に設置されるため激しく老朽化します。万が一にも火災が発生した際に有効活用できるよう、定期的な点検や整備は欠かせません。
老朽化した機器だけをインターネットで取り寄せて交換することも可能ですが、消火設備の専門家に点検を依頼すれば、安全性も高まります。
消防設備の整備点検に豊富な実績のあるトネクションは、予期せぬ火災への備えを万全にするお手伝いをいたしております。地域の皆様の安心・安全な暮らしを守るために、ホース格納箱の点検、更新、新設をお考えなら、ぜひトネクションにお問合せください。